中東情勢が工場の電気代を上げる理由

目次

中東情勢や燃料価格の変動は、工場の電気代に影響を及ぼす要因です。本記事では、原油・LNG価格が燃料費調整制度や市場価格を通じて電気代へ反映される仕組みと、工場が取れる対策を解説します。

日本の電気は輸入燃料の影響を受けやすい

資源エネルギー庁の2024年度エネルギー需給実績によると、発電電力量の構成は、再生可能エネルギーが23.1%、原子力が9.4%、火力が67.5%です※1。火力発電はLNG、石炭、石油などを燃料にしているため、燃料の国際価格や輸送ルートの不安定化が発電コストに影響します。

特に原油は中東依存度が高く、資源エネルギー庁の資料では、2023年度の原油輸入に占める中東地域の割合は94.7%です※2。LNGは調達先が分散しているものの、中東からの輸入分もあり、燃料の国際価格や輸送リスクと無関係ではありません。

※1 参照元:資源エネルギー庁|2024年度エネルギー需給実績(確報)概要【PDF】(https://www.enecho.meti.go.jp/statistics/total_energy/pdf/gaiyou2024fykaku.pdf)
※2 参照元:資源エネルギー庁|エネルギー動向 2025年6月版 第3節 一次エネルギーの動向(https://www.enecho.meti.go.jp/about/energytrends/202506/html/s-1-3.html)

原油価格の上昇はLNG価格にも波及する

日本向けLNG価格は原油価格を参照する契約が多い

原油価格が上がると、日本向けLNG価格にも影響が及ぶ場合があります。日本のLNG調達では、原油価格を参照して価格を決める長期契約が多く含まれているためです。資源エネルギー庁の資料でも、日本向けLNG価格は原油価格を参照して決められるものが多く、原油価格上昇の影響を受けたと説明されています。

中東情勢はLNGスポット価格にも影響する場合がある

中東情勢の悪化は、原油価格に加え、輸送リスクや燃料確保への不安を通じて、LNGのスポット調達価格に上昇圧力をかける要因です。ただし、LNG価格は需給、在庫、欧州・アジアの需要、輸送リスクなど複数の要因で動きます。中東情勢だけが原因で上がるような断定には注意が必要です。

燃料費調整制度が電気代への伝達経路になる

燃料費調整額は請求書で確認できる

中東情勢の影響を見る際は、電力量料金だけでなく、燃料費調整額の変化も確認しておきましょう。燃料費調整額は、燃料価格の変動が電気代に反映される項目です。工場の請求書や電力会社のWeb明細で、月ごとの変化を追うことができます。

燃料価格は貿易統計などをもとに算定される

燃料費調整制度では、財務省の貿易統計などをもとに燃料価格を算定します。電力会社や契約メニューごとに定められた基準価格との差が、電気代へ反映される仕組みです。算定期間や計算方法は、契約種別や電力会社によって異なる場合があります。

燃料価格の変動は後の月の電気代に反映される場合がある

燃料価格の変動が、すぐに請求額へ出るとは限りません。統計の公表や各社の計算期間を経て、後の月の電気代へ反映されるケースもあります。中東情勢が悪化した直後の請求書だけを見て、影響がないと判断するのは早計です。

工場の電気代は市場価格の影響も受けやすい

市場連動型の契約ではJEPX価格が電気代に影響する

市場連動型の電力契約では、日本卸電力取引所のスポット市場価格が電気代に影響します。JEPXは、翌日受け渡しの電力を取引するスポット市場の価格指標を確認できる公開先です。中東情勢などで燃料確保への不安が広がると、市場価格の上昇が工場の電気代を押し上げる要因になります。

固定型か市場連動型かで価格変動リスクは変わる

電気代の変動幅は、契約メニューによって異なるものです。固定型契約は日々の市場価格の影響を受けにくい一方で、契約更新時に単価が見直されることがあります。市場連動型契約は、市場価格の変動が電気代に反映されやすいため、請求書や契約書で調整項目を確認しておくことが重要です。

中東情勢悪化に備えて工場ができること

消費量そのものを減らす

高効率モーター、コンプレッサー、空調設備への更新やLED化は、電力使用量の削減に直結します。使用量を下げておくほど、燃料価格や市場価格が上がったときの請求額への影響を抑えやすくなるためです。デマンドコントロールでピーク電力を抑えれば、基本料金の見直しにもつながります。

自社で発電する

自家消費型の太陽光発電は、昼間に購入する電力量を減らす方法です。発電した電気を工場内で使えば、電力会社から買う電気の一部を自社発電に置き換えられます。導入可否は、屋根面積や耐荷重、日射条件、稼働時間などによって変わるため、事前確認が欠かせません。

契約プランを見直す

固定型契約と市場連動型契約では、電気代の上がり方が異なります。固定型は更新時の単価見直し、市場連動型は日々の市場価格の影響に注意が必要です。使用時間帯や負荷パターンに合う契約かを確認すれば、不要な調整額や割高な単価を避けやすくなります。

中東情勢による電気代上昇には省エネ対策で備えよう

中東情勢が工場の電気代に影響する流れは、原油価格の上昇、LNG調達コストへの波及、燃料費調整制度や市場価格を通じた電気代への反映という順序で考えるとつかみやすくなるはずです。

情勢悪化が報じられても、請求額への反映には時間差があります。反対に、情勢が落ち着いた後もしばらく高い燃料価格の影響が残る点にも注意が必要です。外部環境による電気代上昇は避けにくいものの、省エネを心がけて使用量を減らせば影響を抑えられます。

工場の省エネ対策は、電気代削減だけでなく、法改正対応や補助金活用とも関係しているものです。自社で何から着手すべきか迷う場合は、以下から対策の種類と進め方をチェックしてください。

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