2026年の省エネ関連制度改正で工場に何が起きる?
工場が確認すべき省エネ関連の法律は大きく分けて2つ。新築・増改築時の建物性能に関わる「建築物省エネ法」と、既存工場の運営に関わる「省エネ・非化石転換法」です。本記事では建築物省エネ法と省エネ・非化石転換法(2022年改正・2023年4月施行の改正省エネ法)を整理し、工場長や設備管理者が把握しておきたい義務やリスク、対応の手順をまとめています。
2026年に工場が確認すべき省エネ関連の法制度とは?
工場が関わる法律は複数あるため、対象となる場面を分けて理解することが重要です。法律ごとに求められる内容を整理していきましょう。
1.工場の新築・増改築に関係する「建築物省エネ法」
工場建築物を新築・増改築する場合は、建築物省エネ法(建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律)への対応が必要です。2026年4月1日以降に省エネ適判を申請する中規模非住宅建築物は、改正に伴い省エネ基準が引き上げられます。
対象となる基本ラインは、延床面積300㎡以上2,000㎡未満の非住宅建築物※1です。工場等も対象に含まれるため、建て替えや増改築を予定している場合は、設計初期から確認しておく必要があります。
省エネ適判で確認されること
建築物が省エネ基準に適合しているかを確認します。設計後半で基準への対応不足が分かると、設備仕様や設計内容の見直しが必要になる場合も。空調、換気、照明などの設備性能を早い段階で確認しておくことが重要です。
工場等に求められるBEI水準
一次エネルギー消費性能を示すBEIの基準が0.75※2へ引き上げられます。BEIは、建物で使う一次エネルギー消費量が基準に対してどの程度かを示す指標です。
太陽光発電やコージェネレーション設備の自家消費分も評価対象となるため、設計段階から建物性能と設備計画をあわせて検討する必要があります。
2.既存工場の運営に関係する「省エネ・非化石転換法」
一定規模以上のエネルギーを使う事業者は、省エネ・非化石転換法(正式名称:エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律)への対応が求められます。
対象となる基本ラインは、原油換算で年間1,500kl以上のエネルギーを使用する事業者※3です。判定は工場単体ではなく、本社や複数工場、営業所などを含めた事業者全体で行います。
定期報告書と中長期計画書で求められること
対象事業者は、エネルギー使用量や原単位、設備の管理状況などを定期報告書にまとめて提出します。
中長期計画書では、省エネ対策に加え、非化石エネルギーへの転換目標や取り組みを示しましょう。求められているのは単なる書類対応ではなく、現場データを継続的に整理できる体制づくりです。
非化石エネルギーへの転換で確認すべきこと
工場では、電力使用量の削減だけでなく、再エネ電力の調達、自家消費型太陽光発電の導入可能性、電力需給に応じた運用調整なども検討対象になります。まずは自社のエネルギー使用状況を把握し、非化石エネルギーへ切り替えられる余地を整理しておくことが重要です。
屋根設置太陽光発電は非化石エネルギー活用の選択肢
屋根設置太陽光発電は、すべての工場に一律で義務付けられているわけではありません。非化石エネルギー活用における選択肢の一つとして、屋根面積や耐荷重、築年数、既存設備、設置権限などを確認し、導入可能性を整理しておくことが重要です。
設置が難しい場合も、その理由を整理しておくと、中長期的なエネルギー戦略の検討に役立ちます。
省エネ関連の法制度への対応を後回しにするとどうなる?
報告不備や申請遅れにつながる可能性があります。取引先からの信頼低下を招く場合もあるでしょう。重要なのは大規模投資を急ぐことではありません。まず現状を把握し、説明できる状態を整えることが大切です。
省エネ・非化石転換法の対応を後回しにすると起こるリスク
- 定期報告書や中長期計画書の提出に必要なデータが揃わず、管理部門や現場に急な確認作業が発生する
- エネルギー使用量や設備管理状況を正確に説明できず、行政対応や社内監査で追加確認が必要になる
- 非化石エネルギーへの転換方針を整理できていないと、設備更新や電力契約の見直し判断が遅れる
- 取引先から省エネ・脱炭素対応の説明を求められた際に、対応状況を示しにくくなる
建築物省エネ法の対応を後回しにすると起こるリスク
- 設計後半で省エネ基準への不適合が分かり、設備仕様や建築計画の見直しが必要になる
- 省エネ適判や確認申請が遅れ、着工時期が後ろ倒しになる
- 工期の遅れにより、生産ラインの移設、新設備の稼働開始、倉庫の使用開始などに影響する
- 設計変更や工程調整が発生し、追加コストや関係部署との再調整が必要になる
省エネ関連の法制度への対応を進める前に確認・整理しておきたい項目
省エネ関連の法制度への対応を進めるにあたり、いきなり設備投資から始める必要はありません。
まずは対象の確認、現状の把握、屋根条件の確認、新築・増改築予定の有無を整理することが大切です。そのうえで補助金や省エネ診断、投資回収の検討に進めば、判断のスピードも上がるでしょう。
1. 自社が対象事業者に該当するか確認する
まず確認したいのは、原油換算で年間1,500kl以上のエネルギーを使っているかどうか※4です。工場単体だけで判断すると、対象かどうかを見誤りかねません。本社や他拠点を含めた事業者全体での使用量を集計しておきましょう。
2. エネルギー使用量と主要設備を棚卸しする
電気や燃料、熱の使用量に加え、生産量や稼働時間、空調・コンプレッサー・ボイラー・照明・生産設備の状況を整理します。エネルギーを多く使っている箇所が分からなければ、的確な報告や改善計画にはつながりません。
3. 屋根設置太陽光の設置余地を確認する
屋根面積や耐荷重、老朽化の状況、既存設備、日射条件、設置権限を確認し、設置できる場所と難しい場所を分けておきましょう。設置が難しい場合でも、理由を整理しておけば、非化石エネルギー転換の検討記録や社内説明の材料として活用できます。
4. 新築・増改築の予定と申請時期を確認する
建築計画がある場合は、省エネ適判の申請予定日、延床面積、用途区分を確認しておきましょう。2026年4月1日以降の申請で対象規模に該当する場合は、設計初期から基準適合を前提に進める必要があります。
5. 設備更新を検討する場合は補助金情報を確認する
空調や照明、コンプレッサーなどの設備更新、太陽光発電のような自家消費型設備の導入を検討する際は、補助金の活用余地を確認しておきたいところです。次の記事では、工場が2026年に確認すべき省エネ補助金の情報を掲載中。申請準備や採択されやすい申請に近づけるポイントも解説しています。
6. 対策の優先順位に迷う場合は省エネ診断を活用する
何から手を付けるべきか分からない場合は、省エネ診断を使って課題を見える化するのがおすすめです。電力使用量の大きい設備や無駄な運転の把握につながり、報告書や計画づくりにも役立ちます。
以下の記事では、無料・低負担で利用できる工場向け省エネ診断の支援制度をご紹介。省エネ診断の流れや、診断後の優先対策の考え方も解説しているので、参考にしてください。
7. 投資判断の前に回収期間を試算する
工場の省エネ投資を何年で回収できるかは、初期投資額や年間の削減額によって変わります。試算方法を知っておけば、社内稟議や本社への説明にも生かせるでしょう。次の記事では、投資回収期間の目安を算出する方法や実際の工場課題を基にした投資回収のシミュレーション例などを掲載しています。
2026年に向けた省エネ関連の法制度への対応は現状把握から始めよう
2026年から省エネ対策を進める予定の工場は、既存工場の運営に関わる省エネ・非化石転換法と、新築・増改築時に関わる建築物省エネ法に分けて考えることが大切です。特に建築物省エネ法では、2026年4月1日以降に省エネ適判を申請する中規模非住宅建築物で省エネ基準が引き上げられます。
対象範囲によって求められる対応は異なるため、まずは自社の現状を整理したうえで、段階的に取り組みを進めましょう。
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