電気代と原材料費の同時高騰に備えるには
本記事では電気代と原材料費の高騰が製造業の利益を圧迫する理由と、コスト構造の見直しや省エネ対策を組み合わせた判断の進め方について解説します。
電気代と原材料費の同時高騰は製造業の利益を圧迫する
片方だけの値上がりより利益への影響が大きい
電気代と原材料費が同じ時期に上がると、製造原価を構成する複数の費目が重なってコストが増加。どちらか一方の上昇であれば、工程改善や調達方法の見直しで吸収できる場合もあるでしょう。一方で、エネルギー費と原材料費の上昇が重なると、改善効果を超えるコスト増が生じて利益率が下がります。単一費目だけでなく、原価全体への影響を確認しましょう。
製造業は電気代と原材料費の影響を受けやすい
製造業では、生産設備の稼働に加え、空調、冷却、加熱、乾燥など、様々な工程で電力を使用します。また、製品づくりには原材料の継続的な調達も必要です。
電気代と原材料費の両方が製造原価に含まれるため、仕入れ単価の変動が原価に反映されます。売上が変わらないまま電気代と原材料費が上昇すると、製造原価が膨らみ、利益が削られやすい構造です。
電気代と原材料費の上昇が重なりやすい背景
エネルギー価格の上昇が製造コストに影響する
電気代は、燃料価格や為替動向、世界情勢、電力需給、契約内容などの影響を受けます。日本は化石燃料の多くを海外からの輸入に頼っているため、国際的な資源価格や為替の変動がエネルギーコストに関わる構造です。工場の電力コストを判断する際は、請求額だけでなく、外部環境の変化も合わせて確認することが欠かせません。
原材料費は品目によって上昇要因が異なる
原材料費の動きは、業種や使用する材料によって異なります。金属材料であれば国際市況や需要動向、木材であれば供給環境、石油関連製品であれば原油価格や中東情勢など、価格変動の要因は一律ではありません。
直近でも中東情勢の緊迫化により、原油やエネルギー供給への警戒が高まっています。企業物価指数や貿易統計などを確認し、材料ごとの変動要因を見ておきましょう。
仕入先の値上げが工場の原価に反映される
原材料費の上昇は、材料そのものの相場変動だけで起こるとは限りません。仕入先側でも電気代、燃料費、物流費、人件費などが上がると、その一部が仕入れ単価に反映されるためです。自社工場で使う電気代だけでなく、サプライチェーン全体のコスト上昇が原価にどう影響するかも見ておきましょう。
電気代と原材料費の高騰に備えて確認すべきコスト構造
製品ごとの原価を分解する
電気代と原材料費の高騰に備えるには、製品ごとの原価構成を分けて確認することが欠かせません。材料費や電気代、労務費、外注費、物流費などを切り分けると、どの製品や工程が利益を圧迫しているのかが見えてくるでしょう。工場全体の支出だけで判断せず、製品単位で原価を見ることで、価格交渉で説明すべき費目と、社内改善で見直す費目を分けて考えられます。
電気代と原材料費の上昇幅を見る
確認すべきなのは、工場全体の支出額だけではありません。電気代と原材料費がそれぞれどの程度増えているのかを、前年同月や直近12か月の推移で比べましょう。単価上昇による影響なのか、使用電力量や購入量の増加による影響なのかを分けて見ると、契約の見直しや省エネ対策、調達条件の確認など、取るべき対応を判断できます。
価格交渉の対象と社内改善の対象を仕分ける
すべてのコスト増を現場改善だけで吸収しようとすると、利益だけでなく職場環境や設備保全にも負担が及ぶリスクがあります。価格交渉では、電気代や原材料費の上昇幅を示す根拠が必要です。一方で、省エネや運用改善で抑えられる費目は、社内で見直す対象になります。費目ごとに対応方針を分けておくと、取引先に示す根拠と社内で着手する改善を混同せずに進められるでしょう。
同時高騰に備える省エネ対策の考え方
使用電力量の大きい工程から見る
省エネ対策では、すべての設備を同じ優先度で見る必要はありません。まずは空調、冷却、加熱、乾燥、コンプレッサー、生産設備など、使用電力量が大きい工程や設備がどれかを確認してください。そのうえで、限られた予算や工数の中で原材料費高騰と並行して進めやすい省エネ候補を絞り込みましょう。
運用改善と設備更新を分けて考える
運転時間や運用ルールの見直しなど短期で取り組める施策と、設備更新のように予算化が必要な施策があります。電気代と原材料費が同時に上昇する局面では、すぐに始められる改善を進めながら、中長期の設備投資を検討する2軸の運用がポイントです。短期対応と投資判断を分けることで、予算化の順番を決める判断材料にもなります。
削減額は年間の利益改善額として見る
電気代の削減効果は、月額だけでなく年間で確認しましょう。月数万円の削減でも、年間では設備保全や職場環境の見直しに回せる資金になるケースもあるためです。原材料費の上昇分をすべて吸収できなくても、削減できた金額を利益改善額として示せれば、省エネ対策の必要性を社内で説明しやすくなります。
原価上昇は価格転嫁と社内改善を分けて対策する
原価上昇の根拠を数字で示す
価格転嫁を検討する場合は、どの費目がどれだけ上がり、製品原価にどの程度影響したのかを数字で示すと説得力を持たせられます。請求書や仕入れ明細に加え、企業物価指数、貿易統計、エネルギー関連資料などを組み合わせて取引先に説明する根拠にしましょう。品目ごとの上昇幅を月次や年次で示せると、より良い材料になります。
転嫁できない部分は社内改善で補う
取引先との関係や市場環境によっては、電気代や原材料費の上昇分をすべて価格転嫁できるとは限りません。価格交渉に向けた根拠を用意しつつ、省エネ対策や運用改善による原価改善も並行して進めましょう。転嫁できない費目を社内改善でどこまで抑えられるかを見ておくと、利益率の下振れ対策につなげられます。
アンケートでは69.7%がエネルギーコスト削減を目的に対策を実施
自社調査では、省エネ対策を実施した目的として「電気代・エネルギーコストの削減」が69.7%で最多でした。電気代の上昇は、原材料費や人件費と同じく製造原価を押し上げる要因です。特に使用電力量が多い工場では、単価の変動が利益率に影響しやすくなります。
原材料費の値上がりは仕入先や市況の影響を受けるため、自社だけで抑えきれない部分もあるでしょう。一方で、電気の使い方や設備効率は社内改善の対象にしやすい領域です。コスト上昇が重なる局面では、価格交渉とあわせて、省エネによる原価圧縮も検討しておかなくてはいけません。
※調査時期・調査対象数・調査方法・調査エリアは東京担当者にて後日記載※電気代と原材料費の高騰には優先順位を決めて備えよう
電気代と原材料費の高騰に備えるには、すべての対策を同時に進めるのではなく、利益への影響が大きい項目から順番に確認することが大切です。次の流れで、原価改善、価格転嫁、省エネ対策の優先順位を整理しておきましょう。
- 製品ごとの原価を見て、利益率が下がっている製品や工程を確認する
- 電気代と原材料費の上昇幅を分けて見て、どの費目が原価を押し上げているか把握する
- 価格交渉で説明すべき費目と、社内改善で抑える費目を切り分ける
- 使用電力量が大きい工程や設備を確認し、省エネ対策の候補を絞り込む
- 短期で取り組める運用改善と、予算化が必要な設備更新を分けて検討する
- 判断に迷う場合は、自社と近い工場の省エネ事例や設備別の対策を確認する
それでも、どの対策が自工場に合うか迷う方もいるかもしれません。工場省エネ対策大全では、工場に合った省エネ対策の種類や進め方、設備別の見直しポイントをまとめています。
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