デマンドレスポンス(DR)

目次

電力料金の変動や電力需給ひっ迫への対応策として、工場でもデマンドレスポンス(以降、DR)への関心が高まっています。DRは、電力が不足しやすい時間帯に使用電力を調整し、需給安定に協力する仕組みです。

本記事では、工場で参加しやすい設備や相談先の選び方を整理します。

DRに使える工場設備

工場のDRでは、生産設備を止める対応だけが選択肢ではありません。空調・冷凍機・コンプレッサー・排気ファン・蓄電池・自家発電設備など、短時間なら調整できる設備を見つけるのがポイントです。

※以下は、工場でDR対象として検討されやすい設備の一例です。実際の調整可否は、設備仕様、制御方法、品質基準、契約条件によって異なります。

工場設備DRでの調整しやすさ注意点
空調比較的調整しやすい作業環境・熱中症対策に注意
冷凍機・冷蔵設備条件付きで調整可能品質・温度管理に注意
コンプレッサー条件付きで調整可能エア圧不足による生産影響に注意
排気ファン条件付きで調整可能換気量・安全基準に注意
生産設備調整が難しい場合が多い納期・品質・歩留まりに影響
蓄電池調整しやすい容量・制御システムが必要
自家発電設備調整しやすい場合あり燃料・排ガス・運用条件を確認

空調と冷凍機

空調や冷凍機は、工場の電力使用量に占める割合が大きい場合があります。温度や品質に影響しない範囲で、設定温度、稼働台数、運転時間を一時的に調整できるかを確認しましょう。

コンプレッサーと排気ファン

コンプレッサーや排気ファンは、調整余地がある一方で、圧力不足や換気不足が生産・安全に影響する場合があります。設備停止ではなく、台数制御や出力調整ができるかの確認が必要です。

蓄電池と自家発電設備

蓄電池や自家発電設備がある工場は、買電量を一時的に抑えやすくなります。既存設備をDRに活用できるか、容量、制御方法、運用条件の確認が必要です。

参加判断の分かれ目

デマンドレスポンスは、すべての工場に同じように向く施策ではありません。調整できる電力量、設備の制御性、品質への影響、現場体制によって参加しやすさや効果の得やすさが変わります。自社の条件を整理してから相談する流れが基本です。

区分工場の特徴
参加しやすい工場契約電力が大きい、空調や冷凍機など調整可能な負荷がある、30分値データを確認できる
参加しやすい工場蓄電池や自家発電設備がある、現場と設備管理部門が連携できる
慎重に判断すべき工場温湿度管理が品質に直結する、炉・乾燥・冷凍工程を止めにくい
慎重に判断すべき工場現場判断で設備操作できない、DR要請時の対応者が決まっていない

調整できる負荷

空調、冷凍機、コンプレッサー、蓄電池など、短時間なら調整できる設備があるという工場は導入を検討しやすいでしょう。契約電力が大きいほど、調整できる電力量も大きくなりやすい傾向があります。

品質管理の厳しさ

冷蔵・冷凍、クリーンルーム、炉、乾燥工程などは、電力調整が品質や安全に影響しかねません。単純に得られるメリットだけで判断するのではなく、調整してよい設備と避けるべき設備を分けて考える必要があります。

現場体制の整備

DR要請が来たときは、誰が判断し、どの設備をどこまで調整するかを決めておく必要があります。属人的な対応ではなく、現場と管理部門で手順を共有する設計が欠かせません。

デマンドレスポンス(DR)の仕組み

デマンドレスポンス(DR)とは、需要家が電力使用量を調整し、電力需給バランスの安定に協力する仕組みです。資源エネルギー庁は、消費者が電力使用量を制御して需給バランスを調整する仕組みと説明しています。

下げDRと上げDR

下げDRは、電力需給が厳しい時間帯に使用電力を抑える取り組みです。上げDRは、例えば再生可能エネルギーの発電量が多い時間帯に、電力使用を増やす取り組みにあたります。

生産停止以外の方法

DRは、生産ライン停止だけを意味しません。空調や補助設備の出力調整、蓄電池の放電、自家発電設備の活用など、生産への影響を抑えた方法もDRにおける手法です。

報酬機会の確認

契約先の小売電気事業者、アグリゲーター、または関連制度の要請・条件に応じて電力使用を調整し、実績に応じて報酬を得られる場合があります。報酬条件は契約や制度によって異なるため、事前確認が必要です。

工場で注目される背景

猛暑や寒波、燃料価格の変動、再生可能エネルギーの拡大により、電力需給調整の重要性が増しています。資源エネルギー庁では、2022年6月の東京エリアの需給ひっ迫時に、複数のアグリゲーターが需要抑制に取り組んだ事例を公開しました。

需給ひっ迫時の調整力

電力需要が供給を上回りそうな時間帯に、工場が一時的に使用電力を下げれば需給安定に貢献できます。大口需要家である工場は、調整できる電力量が大きくなりやすい点も特徴です。

省エネと収益機会

通常の省エネは電気代削減が中心ですが、DRでは電力調整への協力により報酬を得られる可能性もあります。単なる節電ではなく、電力使用を管理する施策として捉える視点が必要です。

電力管理の見える化

DR参加を検討すると、デマンド値や30分値データを確認する流れになります。どの時間帯に電力が集中しているかを把握できれば、通常時の省エネにもつなげやすいでしょう。

参加に必要な条件

参加条件は、契約するアグリゲーター、電力会社、市場制度によって異なる項目です。一般的には、調整できる電力量、制御できる設備、計測データ、応動時間、運用体制などが確認されます。無理なく対応できる範囲を明確にしましょう。

調整できる電力量

一定量の電力を下げられるかが参加判断の出発点です。空調や生産補助設備の負荷が大きい工場、蓄電池や自家発電設備がある工場は、参加余地を確認しやすいでしょう。

確認できる電力データ

参加前には、デマンド値、30分値、設備別の電力使用量などを確認します。どの時間帯に電力を多く使っているかが分かると、調整可能な時間帯や設備を選びやすい状態です。

対応企業との契約

工場が単独で市場対応するのは難しいケースもあるため、アグリゲーターやDR対応企業に相談する流れがよく取られます。対応できる制度や設備範囲を確認しましょう。

参加によるメリット

DRのメリットは、報酬を得られる可能性だけではありません。電力使用状況を見える化し、ピーク電力を意識すると、通常時の省エネや設備運用の見直しにもつながります。電力管理を一段進めるきっかけになるでしょう。

報酬を得られる可能性

契約内容によっては、DR要請に応じて電力を調整した実績に対し、報酬を得られる場合があります。報酬額や支払い条件は制度や契約で異なるため、複数社への確認が必要です。

ピーク電力の把握

DR参加を検討すると、どの時間帯に電力使用が集中しているかを確認する流れになります。ピークの原因が分かれば、通常時のデマンド管理や電気代削減にもつなげやすいでしょう。

省エネ投資の判断材料

DRに参加できるかを確認する過程で、空調制御、EMS、蓄電池、コンプレッサー更新などの投資候補も見えてきます。設備投資の優先順位づけにも活用可能です。

参加前の注意点

デマンドレスポンスは有効な選択肢ですが、どの工場にも無条件で向くわけではありません。生産品質、安全、納期、現場負担に影響する調整は避ける必要があります。参加前に、調整できる設備と調整してはいけない設備を分けましょう。

生産や品質への影響

冷蔵・冷凍、温湿度管理、クリーンルーム、炉、乾燥工程などは、電力調整が品質に影響しかねません。参加可否は、現場の品質基準を確認したうえで判断しましょう。

現場負担の増加

DR要請のたびに担当者が手動で設備を操作する運用では、現場負担が増えます。自動制御や事前ルール化ができるかを確認し、無理のない運用にする視点が必要です。

報酬だけの判断回避

報酬が得られるとしても、生産停止や品質低下のリスクが大きければ逆効果になる可能性があります。DRは収益機会だけでなく、操業安定と両立できる範囲で検討しましょう。

相談前チェックリスト

DRに対応する企業に相談する前に、電力使用量、契約電力、デマンド値、主要設備、調整可能な時間帯を整理しておきます。事前情報があると、参加可否、想定報酬、必要な制御機器、導入費用を確認しやすいでしょう。

確認項目確認する内容
電気料金明細直近12か月分を用意する
30分値データ時間帯別の使用電力を確認する
契約電力・最大デマンドピーク電力の規模を把握する
主要設備空調、冷凍機、コンプレッサーなどを整理する
調整できる設備短時間なら出力や稼働を変えられる設備を確認する
調整してはいけない設備品質・安全・納期に影響する設備を分ける
現場判断者DR要請時に判断する担当者を決める
蓄電池・自家発電設備容量、運用条件、制御方法を確認する

電力使用データ

直近1年分の電気料金明細、デマンド値、30分値データを用意しましょう。夏・冬のピーク時間帯や、平日・休日の使用傾向を把握できると、DR参加余地を判断しやすくなります。

調整候補設備

空調・冷凍機・コンプレッサー・排気ファン・蓄電池・自家発電設備など、調整候補を整理します。止められない設備と、一時的に調整できる設備を分けておくと判断が安定しやすくなるでしょう。

現場で守る条件

温度・湿度・圧力・換気量・納期・安全基準など、下げてはいけない条件を明確にします。対応企業には、現場条件を守れる制御方法の確認が必要です。

DR支援会社を選ぶ際に見るべきポイント

ここではDR支援に対応している企業を選ぶ際に見るべきポイントをまとめています。

対応できるDRの種類

企業によって、下げDR・上げDRの対応可否や、容量市場・需給調整市場などの制度に関連したサービス範囲が異なります。容量市場や需給調整市場は専門性が高いため、工場がどの制度に、どの形で参加できるのかを確認しましょう。

工場設備への対応範囲

空調、冷凍機、蓄電池、自家発電設備、コンプレッサーなど、どの設備を制御対象にできるかを確認しましょう。生産設備を止めずに対応できるかどうかも、業者選定時の重要な確認項目です。

報酬と運用支援

想定報酬、初期費用、月額費用、制御機器の有無、運用代行の範囲を確認しましょう。報酬だけでなく、導入費用や現場対応の負担も含めてチェックする必要があります。

まずは電力データと調整可能な設備を整理して相談する

工場のデマンドレスポンスは、電力使用を調整して需給安定に協力する仕組みです。報酬だけでなく、電力使用の見える化やピーク管理にもつながります。まずは自社の電力データと調整可能な設備を整理し、対応企業に参加可否を確認するとよいでしょう。

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