工場の省エネ投資は何年で回収できるのか

目次

工場の省エネ投資を何年で回収できるかは、初期投資額や年間削減額によって変わります。本記事では、投資回収期間の目安を算出する方法や実際の工場課題を基にした投資回収のシミュレーション例などを掲載しているので、参考にしてみてください。

工場の省エネ投資における投資回収期間の考え方

省エネ投資回収期間とは、設備導入にかかった費用を、年間削減額で何年かけて回収できるかを見る考え方です。大前提となる2つのポイントを解説します。

1.まずは単純回収年数で考える

単純回収年数は初期投資額÷年間削減額で求める簡易的な指標です。実際には保守費や設備寿命なども考慮して評価する必要がありますが、まずは投資判断や社内説明の出発点として単純回収年数を活用するとよいでしょう。

例えば、投資額が300万円、年間削減額が100万円なら、単純回収年数は3年となる計算です。

2.単純回収年数だけで詳細を検討しない

単純回収年数は分かりやすい一方で、電気代の変動、金利や資本コスト、キャッシュフローの現在価値、設備寿命までは反映しきれません。あくまで初期判断の目安とし、詳細検討では別の条件も確認する必要があります。

工場の投資回収シミュレーションに必要な項目

シミュレーションでは、設備費だけでなく、工事費、補助金、年間削減額、保守費、電気料金単価を整理します。数字が曖昧なままだと、投資回収期間も曖昧になりがちです。見積書や電気料金明細、稼働時間をもとに計算する姿勢が欠かせません。

初期投資額

設備本体価格だけでなく、設置工事費、撤去費、配線・配管工事、試運転費などを含めます。見積書の一部だけで計算すると、実際の投資回収期間より短く見えてしまうため、注意が必要です。

年間削減額

削減できる電力量や燃料使用量に、電気料金単価や燃料単価を掛けて算出してください。稼働時間が長い設備ほど、削減効果が金額に表れやすい傾向があります。季節差や生産量の変動も確認が必要です。

補助金を加味した工場の投資回収期間の計算方法

補助金を加味する場合、簡易シミュレーション上では初期投資額から補助金額を引いた金額を自己負担額として扱います。

式は、自己負担額÷年間削減額=補助金後の投資回収期間。補助金の詳細条件ではなく、投資回収シミュレーションへの反映方法に絞って見ることが大切です。

補助金なしの場合

投資額が500万円、年間削減額が100万円なら、投資回収期間の目安は5年です。設備寿命が10年なら、回収後の5年間は削減効果が残る計算になります。初期投資と削減期間を分けて見せると、判断しやすくなるでしょう。

補助金ありの場合

投資額500万円で、補助金が150万円使える場合、自己負担額は350万円になります。年間削減額が100万円なら、投資回収期間の目安は3.5年。補助金を反映すると、投資回収期間が短縮され、導入判断の評価が変わる場合があります。

補助金を使う場合も導入後の採算性確認は必須

補助金で投資回収期間が短くなっても、導入後に十分な削減効果が出なければ採算は合いません。補助金は初期負担を下げる材料であり、設備の必要性や運用後の効果を補うものではないため、補助金なしの場合の採算性も確認しておく必要があります。

工場の省エネ投資シミュレーション例

当メディアの編集チームが工場を対象に実施した電話調査によると、空調台数が多い、夏場の電気代が大きく増える、天井が高く空調が効きにくいなどの課題があることが分かりました。ここでは、電話調査で得られた課題を踏まえ、省エネ投資回収のシミュレーション例を掲載しています。

※調査時期・調査対象数・調査方法・調査エリアは東京担当者にて後日記載※
※投資額、補助金額、削減率はすべて仮定値です。実際の投資回収期間は設備条件、稼働時間、電気料金単価、補助金採択の有無によって変わります。

CASE1.空調台数が多くて夏場の電気代差額が大きい工場

電話調査では、業務用エアコンを40台以上設置し、24時間稼働する工場で、夏季と通常月を比較した際の電気代差額が月200万円程度になるケースが確認されました。

省エネ投資の優先候補として、空調制御や高効率空調更新が考えられます。電気代の総額が大きい工場では、削減率がそれほど高くなくても、削減額が大きくなりやすいでしょう。

空調関連の季節差額 月200万円
対象期間 4か月
年間対象コスト 800万円
削減率 10%
年間削減額 80万円
投資額 300万円
補助金 なし
投資回収期間の目安 3.75年

CASE2.天井高と断熱不足で空調が効きにくい工場

電話調査では、複数棟を持つ金属加工系の工場で、一部工場のみ空調を導入しているものの、天井高や断熱不足、溶接熱の影響で効きにくいという声がありました。

工場の規模にもよりますが、夏場の電気代が月100万円~200万円近くになる場合もあります。空調設備そのものだけでなく、屋根・壁・断熱・運用管理を組み合わせることが、投資回収期間を短くする条件です。

夏場の電気代増加分 月150万円
対象期間 4か月
年間対象コスト 600万円
削減率 8%
年間削減額 48万円
投資額 240万円
補助金 60万円
自己負担額 180万円
補助金活用後の投資回収期間の目安 3.75年

CASE3.業務用エアコンの更新と屋根対策を同時検討している工場

電話調査では、業務用エアコンを約20台設置しており、夏場の電気代が春秋より月100万円弱多いという工場も確認できました。

すでに業務用エアコンの更新を進めている工場でも、屋根・遮熱・制御の追加対策で、空調負荷を下げられる可能性があります。単独対策ではなく、組み合わせた試算で優先順位を決める視点が重要です。

夏場の電気代増加分 月90万円
対象期間 4か月
年間対象コスト 360万円
削減率 10%
年間削減額 36万円
投資額 180万円
補助金 45万円
自己負担額 135万円
補助金後の投資回収期間の目安 3.75年

投資回収期間別に見る工場省エネ対策の違い

投資回収期間は、設備の種類、稼働時間、電気料金単価、補助金の有無で大きく変わります。短期・中期・長期という3軸に分けて、検討すべき対策を整理しているので、社内で優先順位を付けるための比較材料としてご活用ください。

短期回収を狙いやすい対策

運用改善、エア漏れ修繕、照明制御、設定温度の見直しなどは、比較的少ない費用で始めやすい対策です。削減額は大きくなくても、投資が小さいため投資回収期間が短くなりやすいでしょう。

中期回収で検討する対策

LED照明、高効率空調、コンプレッサー、ボイラーなどの設備更新は、数年単位で回収を検討するのが一般的です。補助金を使える場合は、自己負担額を下げて検討しやすくなります。

長期回収で検討する対策

太陽光、蓄電池、EMS、大規模な熱源更新などは、初期費用が大きくなりやすい対策。投資回収期間だけでなく、電気代上昇のリスク、BCP、脱炭素対応、設備寿命も含めて判断する必要があります。

投資回収シミュレーションの失敗リスクを抑えるポイント

前提条件がずれると判断を誤りやすいため、以下の3つのポイントを押さえておきましょう。

1.削減額を楽観的に見積もらない

カタログ値だけで削減額を計算すると、実際の稼働状況とずれる場合があります。稼働時間、負荷率、季節変動、操業日数を踏まえ、現場の実態に近い条件で試算することが重要です。

2.工事費や保守費を入れる

設備本体価格だけでなく、設置工事費、既存設備の撤去費、保守費、消耗品費も確認しましょう。特に保守費や消耗品費は導入後も発生するため、年間削減額から差し引いて見た場合の採算性も確認しておくと安心です。

3.補助金は採択前提にしない

補助金は申請すれば必ず使えるものではありません。採択されなかった場合でも投資できるか、補助金がある場合とない場合の両方で投資回収期間を確認しておく必要があります。

工場の省エネ投資の必要性を経営層に説明する際のポイント

省エネ投資を進めるには、現場の感覚だけでなく、数字で説明できる資料が必要です。投資額、補助金、自己負担額、年間削減額、投資回収期間を一覧化すると、判断材料がそろいます。なぜ今更新すべきかまで示せば、稟議に乗せやすくなるでしょう。

補助金あり・なしを並べる

補助金なしの場合と補助金ありの場合で投資回収期間を並べ、同じ設備の自己負担額がどれだけ下がるかを示すことで、投資判断の違いが伝わりやすいでしょう。

削減額だけでなくリスクも示す

老朽設備の故障リスク、修繕費の増加、急な停止による生産影響も説明材料になります。省エネ投資を、電気代削減だけでなく操業安定の投資として示す視点が欠かせません。

診断結果を根拠にする

省エネ診断の結果がある場合は、設備ごとの改善余地や削減効果を根拠として使えます。現場の感覚ではなく、第三者の診断をもとに説明できる点が成功の鍵になるでしょう。

工場の省エネ投資は投資回収期間と現場リスクを合わせて判断しよう

省エネ投資の判断では、初期投資額と年間削減額だけでなく、補助金、保守費、設備寿命、故障リスクも合わせて確認する必要があります。まずは単純回収年数を算出し、補助金あり・なしの両方で比較する流れが基本です。さらに、条件ごとの試算を用意すれば、社内稟議や経営層への説明にも使いやすくなります。

投資回収期間を数字で示せれば、現場の安定稼働とコスト改善につながる前向きな投資として社内に提案しやすくなるでしょう。

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