廃熱回収

目次

工場では、ボイラー、炉、乾燥機、コンプレッサー、冷凍機、排気ダクトなどから多くの熱が捨てられています。廃熱回収は、未利用熱を再利用する省エネ対策です。本記事では、仕組みや費用対効果、専門業者へ相談する前の確認事項をまとめています。

回収できる廃熱源と活用先

廃熱回収では、工場内のどこで熱が発生し、どの温度帯で、どの時間帯に、どれくらい出ているかの確認が必要です。熱源と再利用先が近く、発生時間と使用時間が合うほど、導入効果を検討しやすくなります。

廃熱源主な発生場所再利用先の例
ボイラー排ガス蒸気ボイラー、温水ボイラー給水予熱、温水生成
炉・焼成設備熱処理炉、乾燥炉、焼成炉燃焼空気予熱、工程予熱
乾燥機食品、塗装、繊維、樹脂加工給気予熱、温水利用
コンプレッサー圧縮空気設備温水、暖房、洗浄水加温
冷凍機・空調冷却工程、クリーンルーム温水、再熱、給湯
排気ダクト換気、集塵、局所排気給気予熱、熱交換
排水・温排水洗浄、殺菌、冷却工程ヒートポンプ熱源

高温廃熱の活用先

炉やボイラー排ガスのような高温廃熱は、燃焼空気や給水の予熱に使いやすい熱源です。温度が高いほど利用価値は高まりますが、腐食や粉じん、ダクト改修といった条件も確認しましょう。

中低温廃熱の活用先

冷凍機・空調・温排水・コンプレッサーなどの中低温廃熱は、そのままでは使い道が限られます。ヒートポンプで温度を上げると、温水や空調再熱へ活用しやすくなるでしょう。

向く工場の条件

廃熱回収は、熱源があるだけでは成立しません。回収できる温度、熱量、稼働時間、再利用先がそろう工場ほど導入しやすい一方で、熱の発生が不安定な工場ではより慎重な試算が求められます。

区分工場の特徴
導入しやすい工場ボイラー、炉、乾燥機、冷凍機など熱源が大きい
導入しやすい工場温水、予熱、洗浄、空調再熱など熱の使い道がある
導入しやすい工場熱源と利用先の稼働時間が近い
慎重に判断すべき工場廃熱の発生時間が短い、または不安定
慎重に判断すべき工場熱源と利用先が遠く、配管工事が大きい
慎重に判断すべき工場粉じん、腐食、油分などで熱交換器が汚れやすい
参照元1:NEDO公式HP【PDF】(https://www.nedo.go.jp/content/100957675.pdf)

熱を使う工程がある

温水・洗浄・乾燥・空調再熱など、回収した熱を使う工程がある工場は検討しやすい条件だと言えます。熱を回収しても使い道がなければ、費用対効果は出にくいでしょう。

稼働時間が一致しているか、蓄熱槽を導入できる

昼間に熱が出ても、夜間にしか熱を使わない場合は、蓄熱や運用変更が必要です。熱の発生時間と使用時間を照合し、必要に応じて蓄熱槽も検討しましょう。

汚れと腐食の清掃の目途が立つ

排ガスや排気に粉じん、油分、腐食成分が含まれる場合、熱交換器の汚れや劣化が問題になりがちです。保守頻度や清掃性まで含めて設計しないと、導入後に性能が落ちやすくなります。

廃熱回収の仕組み

廃熱回収とは、工場から捨てられている熱を熱交換器やヒートポンプなどで回収し、別の工程で再利用する仕組みです。燃料や電力を使っていた加熱工程を回収熱で一部代替できれば、省エネにつながる可能性があります。

熱交換器で移す

熱交換器は、排ガス、温排水、冷却水などの熱を、別の空気や水へ移す装置です。ボイラー給水の予熱、外気の予熱、温水生成などで使われます。

ヒートポンプで上げる

中低温の廃熱は、そのままでは利用先が限られるケースが一般的です。ヒートポンプを使うと、低温側の熱をくみ上げ、高温側で温水や加熱用途に利用しやすくなります。

蓄熱でずらす

廃熱が出る時間と熱を使う時間がずれる場合は、蓄熱槽の利用も有効です。蓄熱を組み合わせると、熱を捨てる時間を減らし、必要な時間に再利用しやすくなります。

導入効果の見方

廃熱回収の効果は、回収する熱量、温度帯、再利用先、稼働時間で変わる点に注意が必要です。公開事例を見るときは、削減額だけでなく、どの熱源を何に再利用したのか、自社工場と条件が近いかを確認しましょう。

空調の冷温水利用事例

武州製薬の事例では、クリーンルーム空調で冷水と温水を年間通じて使う条件に着目し、廃熱回収型ヒートポンプを導入しています。公開資料には、原油換算エネルギー使用量328kL、CO2排出量632t/年の削減効果が掲載されていました。

生産設備の廃熱回収事例

三菱ケミカルエンジニアリングの省エネ事例ページでは、プラントや生産設備、クリーンルーム空調などの省エネ対策が紹介されています。そのうち廃熱回収の例では、ボイラー・炉などから排出される熱を回収し、発電や空調・蒸気などに活用する内容が示されていました。

参照元:三菱ケミカルエンジニアリング公式HP(https://www.mec-value.com/tech/environment-energy/consulting/)

費用を左右する主な内訳

廃熱回収の費用は、熱源の種類、温度、回収量、配管距離、熱交換器やヒートポンプの容量、既存設備との接続工事で変わります。装置費だけでなく、設計から保守、停止期間も含めた確認が必要です。

設備と周辺機器

熱交換器、ヒートポンプ、ポンプ、蓄熱槽、制御盤、センサーなどが主な設備費になります。どの熱をどの温度で使うかによって、必要な機器構成は変わる点に要注意です。

配管とダクト工事

熱源と利用先をつなぐ配管やダクト工事は、費用に大きく影響します。既存設備の停止が必要な場合は、工事時期や生産影響も含めて検討が必要です。

保守と性能低下

熱交換器は、汚れやスケールで性能が落ちる場合があります。清掃頻度や点検費用を確認し、導入後も効果を維持できる設計が必要です。

費用対効果の見方

費用対効果は、削減できる燃料費・電気代、導入費用、補助金、保守費、稼働時間で決まります。特に、回収した熱が安定して使われるかが重要です。使い道が少ないと、装置を入れても効果が出にくくなります。

代替できるエネルギー量と単価

廃熱回収では、ボイラー燃料、蒸気、電気ヒーター、冷凍機負荷など、どのエネルギーをどれだけ代替できるかの確認が必要です。削減額は、代替量と単価から試算します。

稼働時間の長さ

廃熱が長時間安定して出る工場ほど、投資回収を検討しやすいと言えます。短時間しか熱が出ない場合は、装置の稼働率が低くなり、費用対効果が合いにくくなるので慎重な検討が必要です。

補助金の有無

廃熱回収は設備費が大きくなりやすいため、補助金を活用できるかも確認が必要です。補助金あり・なしで自己負担額を分け、投資回収年数を試算しましょう。

相談前チェックリスト

相談時には、設備配置図、配管系統図、排ガス・排水・冷却水の温度や流量データ、月別の燃料・電力使用量、稼働カレンダーなどを用意しておくと、初期診断が進めやすくなります

確認項目確認する内容
廃熱源ボイラー、炉、乾燥機、冷凍機、排水など
温度何℃の熱が出ているか
熱量・流量排ガス量、冷却水量、排水量など
発生時間何時間、どの時間帯に熱が出るか
再利用先給水予熱、温水、洗浄、空調、乾燥など
熱源と利用先の距離配管・ダクト工事の規模
汚れ・腐食粉じん、油分、薬品、スケールの有無
既存設備ボイラー、冷凍機、ヒートポンプ、EMSなど
工事制約停止可能時間、施工スペース、安全条件
参照元1:NEDO公式HP【PDF】(https://www.nedo.go.jp/content/100957675.pdf)
参照元2:三菱ケミカルエンジニアリング公式HP(https://www.mec-value.com/tech/environment-energy/consulting/)

温度と量の確認

廃熱回収では、温度だけでなく熱量も重要です。高温でも量が少なければ効果は限られます。排ガス温度や流量を把握しておくのが無難です。

再利用先の整理

廃熱回収は、使い道があって初めて効果が出ます。給水予熱、洗浄水、温水、空調再熱、乾燥工程など、どの工程で熱を使えるかを先に整理しましょう。

既存設備との接続

既存のボイラー、冷凍機、配管、制御盤、EMSと連携できるかで工事費が変わります。専門業者には、既設設備を活かせるか、新設が必要かの確認が必要です。

業者選びの際に見るべきポイント

ここでは廃熱回収に対応している企業を選ぶ際に見るべきポイントをまとめています。

熱源と温度帯

ボイラー排ガス・炉・乾燥機・温排水・冷凍機・コンプレッサーなど、業者がどの熱源に対応できるかをまずは整理します。高温・中温・低温の対応範囲もチェックしましょう。

設計から工事まで

廃熱回収は、機器を買うだけでは成立させにくい対策です。熱源調査・熱量計算・配管設計・機器選定・施工・試運転に一貫して支援できるかを確認します。

効果検証と保守

導入後に、燃料削減量、電力削減量、CO2削減量、熱回収量を確認できるかも重要なチェックポイントです。熱交換器の清掃や性能劣化への保守体制も見ておきましょう

熱源整理から開始

工場の廃熱回収は、捨てている熱を温水、予熱、空調、洗浄などに再利用する省エネ対策です。効果を出すには、熱源の温度・量・発生時間と、再利用先の条件をそろえる必要があります。まずは専門業者に熱源調査を相談し、回収可能性と費用対効果を検討しましょう。

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