市場連動型プランの落とし穴と回避策
市場連動型プランは、電気代を下げられる可能性がある一方で、卸電力市場の価格変動を受けやすい契約です。高圧電力を使う工場では、単価が数円変わるだけでも年間の請求額や製造原価に大きく響きます。本記事では、市場連動型プランのデメリット、固定型との違い、契約前に確認すべきポイントを説明します。
市場連動型プランとは何か
市場連動型プランとは、電気の調達価格や価格変動が、電気代に反映される契約です。日本では、日本卸電力取引所(JEPX)のスポット市場価格が、電力会社の調整項目や契約メニューに影響を与えています。
ただし、市場連動型といっても計算式は一律ではありません。市場価格調整単価の算定方法、燃料費調整額との関係、上限単価の有無、反映時期は、電力会社や契約メニューによって変わります。市場連動型なら安い・固定型なら安定と単純に判断せず、自社の使用量と契約条件を比較することが大切です。
市場連動型プランの主なデメリット
年間予算と製造原価が読みづらくなる
市場連動型プランだと、市場価格が上がると、使用量が変わらなくても請求額が増加。高圧電力を使う工場では、月の使用量が大きいため、単価変動が年間予算や製造原価に大きく影響します。取引先との価格改定がすぐにできない工場では、特に注意が必要です。電気代が上がっても製品価格へ転嫁できなければ、利益率だけが削られてしまいます。
ただし、市場連動型プランは、市場価格が下がれば電気代を抑えられる可能性がある契約。導入前には、単価が一定以上になった場合でも、年間予算や製造原価に無理が出ないかを試算しておきましょう。
昼間稼働が多い工場は影響を受けやすい場合がある
工場では生産ライン、空調、コンプレッサー、冷凍機などが集中して動くため、日中に電力使用のピークが出やすい業種です。市場価格は需給状況や時間帯、季節、再エネ出力などで変動するため、契約内容によっては日中稼働が多い工場ほど影響を受ける場合があります。
ただし、日中稼働だから必ず不利になるわけではありません。稼働時間をずらせるか、ピークを抑えられるか、EMSなどで使用量を見える化できるかによって、リスクの大きさは変わります。市場連動型プランは、電気の使い方を管理できる工場であれば検討しやすい選択肢です。
燃料費調整とは別の調整項目が加わることがある
高圧・特別高圧の電気料金では、燃料費調整額に加えて、市場価格調整額が設けられることがあります。燃料価格や市場価格が高騰すると、燃料費調整額だけでなく市場価格調整額も増え、想定以上の電気代につながりかねません。
また、請求書上では基本料金、電力量料金、燃料費調整額、市場価格調整単価、再エネ賦課金などが分かれているため、値上がりの原因を把握しにくい点もデメリットです。使用量の増加によるものなのか、調整単価の上昇によるものなのかを見極められないと、契約見直しや省エネ対策の判断が難しくなります。
固定型プランと市場連動型プランの違い
それぞれの違いを把握しておく
固定型、市場連動型、ハイブリッド型は、価格変動をどこまで受け入れるかが違います。工場の契約では、単価の安さだけでなく、予算管理や急騰リスクまで並べて比較することが大切です。
| 比較項目 | 固定型 | 市場連動型 | ハイブリッド型 |
|---|---|---|---|
| 価格の安定性 | 比較的読みやすい | 市場価格に左右されやすい | 契約内容によって変わる |
| 安くなる可能性 | 限定的 | 市場価格が低い時期は期待できる | 一部で期待できる |
| 急騰リスク | 契約期間中は抑えやすい | 受けやすい | 条件によって抑えられる場合がある |
| 予算管理のしやすさ | しやすい | 難しくなる場合がある | 固定分と変動分の比率による |
| 向いている工場 | 原価や年間予算を安定させたい工場 | 使用量や稼働時間を管理できる工場 | 安定性と価格低下の可能性を両方見たい工場 |
| 確認すべき書類 | 契約書、料金表、更新条件 | 約款、料金表、調整単価の計算式 | 固定分と変動分の条件、上限単価 |
固定型にも更新時の値上げリスクがある
固定型プランは、一定期間の単価が比較的読みやすく、年間予算を組みやすい点が特徴です。一方で、契約更新時に単価が見直されることもあります。固定型なら問題がない、市場連動型ならリスクが高いと単純に分けるのは避けましょう。工場の使用量や価格転嫁のしやすさ、更新時の条件を含めて、経営判断として比較する必要があります。
市場連動型で損をしやすい工場の特徴
価格変動を原価へ転嫁しにくい工場
市場連動型プランで注意したいのは、電力使用量が多く、昼間のピークが大きいにもかかわらず、取引先との価格交渉が難しい工場です。短期的な価格変動を吸収する余力が小さいと、月ごとの請求額の振れによって経営判断が難しくなります。
受注生産や見積から納品までの期間が長い工場では、製品単価をすぐに変えられません。そのため、電気代の上昇分を販売価格に反映できず、利益率を圧迫するおそれがあります。
使用量を管理できない工場はリスクが大きい
価格が下がる時間帯に使用量を寄せられるか、電力のピークを抑えられるかによって負担が変わる点に注意が必要です。稼働時間を柔軟にずらせない工場やデマンド管理が十分でない工場では、価格変動の影響を受けやすくなります。
検討する際は、自社が価格変動に弱い工場なのか、使用量を管理して対応できる工場なのかを分けて考えるのがポイントです。契約条件だけで判断せず、運用できる体制があるかまで確認しましょう。
契約前に確認すべきチェックポイント
契約書・料金表で見る項目
市場連動型プランを契約する前に、営業資料だけで判断せず、契約書や約款、料金表で次の項目を確認しましょう。
- 市場価格調整単価の計算式
- 上限単価の有無
- 燃料費調整額との関係
- 参照する市場価格の種類
- 請求へ反映されるタイミング
- 契約期間と解約条件
特に、上限単価がない契約では、市場価格が上がったときに電気代の負担がどこまで広がるかを把握しておく必要があります。
自社データで見る項目
市場連動型プランを検討するときは、契約条件だけでなく、自社の電気の使い方もチェックポイントです。以下のデータを見ると、価格変動の影響を把握できます。
- 過去12か月の使用量
- 時間帯別の使用実績
- 最大需要電力
- 現在の請求書にある調整項目
- 前年同月の使用量に新しい契約単価を当てはめた試算
- 市場価格が低い月と高い月の試算結果
低い月だけでなく高い月のケースも見て、月ごとの請求額の振れや年間予算への影響を判断しましょう。
電気代が急騰した工場の例
市場価格の高騰が料金に反映され、短期間で電気代が大きく増えた企業もあります。ある中小製造業では、契約単価の値上げに加えて市場価格調整額の影響も受け、半年あまりで負担が約2.5倍に跳ね上がりました。別の製造業でも、契約していた電気料金が突然3倍以上に高騰した事例が報告されています。
市場連動型プランは省エネ対策とセットで考えよう
市場連動型プランは、契約変更だけで電気代を抑える方法ではありません。外部価格に左右される契約である以上、使用量削減、ピークカット、自家消費型太陽光、EMSなどと組み合わせて考えることが大切です。
使用量やピークを抑えられれば、市場価格が上がったときの影響を小さくできる可能性があります。契約を見直すだけでなく、設備や運用もあわせて確認し、外部価格の影響を受けにくい工場に近づけていきましょう。当メディアでは、工場向けの具体的な省エネ手法や設備改善のポイントを紹介しています。
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